Esperanza Spalding “12 Little Spells” @ El Rey Theatre Nov. 20th 2018

突然ですが、皆さんが思う「世界で一番美しい人」は誰ですか? いろんな答えがあると思いますが、私にとってはこの人、Esperanza Spaldingです。

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11月20日(火)、そんな世界で一番美しい人、Esperanze Spaldingのライブを観に行ってきました。

興奮のあまり、終わってからしばらく震えが止まらなかった最高の一夜の記録をここに残しておきたいと思います。

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Esperanza Spaldingについて

まずは知らない人のために簡単にEsperanzaの経歴を紹介します。

Esperanza Spalding(エスペランサ・スポルディング)は1984年アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド生まれ。

ベーシスト、シンガーとして、またジャズミュージシャンとして紹介されることが多いですが、そんな枠組みに納めてしまうのは勿体ない気がします。

早熟で知られる彼女は、5歳になる頃にはオレゴンの室内楽団(Chamber Music Society of Oregon)でヴァイオリンを弾き、15歳で楽団を離れる頃にはコンサートマスターを務めていたといいます。

ベースを始めたのは高校生の頃で、それまでにオーボエやクラリネットも演奏していたとのこと。

16歳で高校を卒業し、ポートランド州立大学の音楽科に入学。その後そこの先生の勧めもありボストンの名門、バークリー音楽大学に編入。編入オーディションでは全額奨学金の権利を得るほどのパフォーマンスを披露。20歳でバークリーを卒業すると同時にそこの講師に最年少で抜擢されるという早熟さを見せます。

卒業の翌年(2006年)にはデビューアルバム『Junjo』をリリース。2009年にはオバマ大統領のご指名でノーベル平和賞の式典で演奏し、2011年にはJustin Bieber(ジャスティン・ビーバー)やDrake(ドレイク)を抑えてグラミー賞の最優秀新人賞を受賞しています。

これまで7枚のアルバムをリリースしていますが、そのどれもが異なった作風を持っており、影響源の多様さを感じさせます。

2017年にはFacebookを通してレコーティング風景を77時間ライブ配信するという試みを実施。この77時間で完成させたアルバム『Exposure』は7,777枚限定でリリースされました(そのうち1枚は私の家にあります)。

2018年には最新作『12 Little Spells』をリリース。といっても現在は配信限定で、CDやLPなどのフィジカルコピーは来年の3月に発売される予定とのこと。アルバム収録の12曲全てにMVがあり、全てYouTubeにて配信されています

今回はこの『12 Little Spells』のツアーというわけです。

Esperanzaと私

私がEspreanzaのことを知ったのはセカンドアルバム『Esperanza』が発売されたときなので2008年のことだったと思います。確かリットーミュージック社の『ベースマガジン』に載っていた『Esperanza』のジャケット写真を観て一目惚れしたのがきっかけでした。

ただ、ちゃんと聴くようになったのは4枚目の『Radio Music Society』(2012年)が出てから。このアルバムはヒップホップグループ、A Tribe Called Questのメンバーとして知られるQ-Tipを共同プロデューサーに迎えており、R&Bの要素が強くジャズリスナー以外でも聴きやすいかもしれません。

その後、私自身がジャズをどんどん好きになっていくにつれて過去作もどんどん好きになっていった、そんな感じです。

2016年の5月には『Emily’s D+Evolution』のツアーで初めて彼女のライブを鑑賞。5弦フレットレスベースで難解なフレーズを弾きながら自由自在に歌う姿に圧倒されたことを覚えています。

その後、上記の『Exposure』プロジェクトが発表されたときはワクワクし、Facebookで少しながらライブ配信も観ていました。限定リリースのプレオーダーが始まると迷わずLPをオーダー。宝物の一つです。

ライブについて

ここからはライブの感想です。ネタバレが入りますので要注意。

ネタバレ箇所を飛ばしたい方はこちらをクリック

今回の会場はEl Rey Theatre。会場の外観を撮るつもりだったんですが、興奮しすぎて忘れてしまいました(笑)

車社会のLA。今回人生で初めて車を運転して会場まで行きました。

会場に入ってまず驚いたのは椅子が用意されていること(『Emily’s D+Evolution』のツアーのときは立ち見でした)。なるほど、確かに『12 Little Spells』は座ってじっくり鑑賞するほうがいいかもしれない、と納得しながら空いている座席に向かうと、座席の上に二つ折りのリーフレットを発見。

中身を見てさらに驚き。本日のお品書きとばかりに、セットリストとメンバーが載っているではありませんか。しかもセットリストには一曲一曲に解説文がついています。メンバー紹介はミュージシャンだけではなく、舞台監督や照明、エンジニア、デザイン担当まで載っていて、「五感全てで楽しんでね」というEsperanzaの意図を感じました。

ステージ向かって左側約半分を階段付きの大きな円柱が占めており、その上には月のような白い円形のスクリーンが鎮座していました。ステージ右側にドラムセットやキーボード、ギターなどの楽器がほぼ縦に並ぶという変わった配置。

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開演を待っている間に流れている音楽は多国籍な雰囲気。ShazamしてみるとJack Dejohnetteが多めでした。

開演予定の20時を少し過ぎてから、女性の声でアナウンスが始まります。もしかして、と思ったらやはりEsperanza本人でした。耳だけじゃなく、手や腕や足やお尻やとにかく身体全体で感じてください、というようなことを話していました。

いよいよ開演。まずはバンドメンバーの3人が登場。ギターとドラムスは『Emily’s~』のツアーと同じでMatthew StevensとJustin Tyson。前回はそこに男性1人・女性2人のコーラス隊という編成でしたが、今回はコーラス隊の代わりに「BASS, SAXOPHONE, KEYBOARD, SYNTH, VOCALS」というクレジットでMorgan Guerinが参加。

この3人がまず素晴らしかった。まるで映画音楽のように音だけで風景描写をしてしまう。それもたった3人で。特にギターのMathhewの表現力はとんでもないです。ほとんどクリーントーンで歪み系エフェクターは全然使っていなかったと思いますが、ピッキングの強弱やピックスクラッチ、ハーモニクス、ありとあらゆるテクニックを用いて様々な景色を想起させていました。

そして私のお気に入りのドラマーであるJustin Tyson。Robert Glasper Experimentで観たときと比べると控えめでしたが、各曲の世界観を表現するために出るときは出て、引くときは引く。ただリズムを刻むためじゃなく、一打一打に意味がこもっている、そう感じさせる素晴らしいドラミングでした。この2人は替えが効かないんじゃないかな。

さて、主役の話に移ります。

Esperanzaは赤っぽいドレスを着て円柱台の上に登場。

美しい。美しすぎる。

ベースは持たず、ハンドマイクを持っての登場。この日はスタジオ音源よりも少しハスキーな声質でしたが、どこまでも伸びるその声は圧巻の一言。第一声目から早くも全身の鳥肌が発動してしまいました。

スクリーンに映る映像や3人のバンドが作り出す音に合わせながら、ミュージカルのように動きをつけて歌うEsperanza。

伸ばした腕が、スリットから覗く脚が、天を仰ぐときに背中が描く曲線が、そしてその声が、全てが神々しいほど美しくて、ただただ見惚れていました。

しばらくずっとハンドマイクを持って歌うEsperanza。歌声はもちろんだけど、やっぱりベースを弾いてる姿が観たいなーと思いながらもそのままライブは終盤へ。12のLittle Spellsのうち、残り数Spellsという曲の途中で「愛が必要だ」というようなことを口にしておもむろにベースのもとへ。ベースを手にとった瞬間に客席から上がった歓声から、みんな私と同じことを望んでいたんだとわかりました。

そしていざEsperanzaが愛用の5弦フレットレスベースを弾きはじめると…

笑ってしまいました。凄すぎて。

Jaco Pastoriusを彷彿とさせる滑らかで速いパッセージを、歌いながらいとも簡単に弾いてしまう。Morganのベースも悪くありませんでしたが、Esperanzaのベースが入った途端、演奏のレベルが数段上がったように感じました。

ジャムセッションに突入すると自然と身体は揺れ、口は開きっぱなしに。Morganがサックスを手に取ると演奏は最高潮に。4人の掛け合いはどんどん熱が上がっていき、クライマックスへ。

私は気付いたときには席から立ち上がり、力いっぱい拍手していました。他の観客もまた同じく。今まで経験したスタンディングオベーションの中で、一番自然に発生したスタンディングオベーションだったように思います。

そのまま完璧な流れでアンコールへ。Esperanzaは最近よくSNSに登場する際に着ている「LIFE FORCE」と大きく書かれた白いジャンプスーツに着替えて登場。最後に残されたLittle Spell、「You Have to Dance」を演って終わりかな、と思っていたら、上述の『Exposure』の話をはじめ、そこから1曲演ってくれました。『Exposure』持っている人?と聞いて予想以上にたくさん手が上がったのを見て喜ぶEsperanzaが可愛かった。

さらにベースを置いてもう一曲。今度は3rdアルバム『Chamber Music Society』から「Little Fly」を。ちょっと違う感じで演ってみるね、と言ったEsperanzaはおもむろにヒューマンビートボックスを披露。これがめちゃくちゃ上手い。そして口でリズムを刻みながら、美しいメロディを美しい声で完璧に歌い上げてしまいました。鳥肌。

そして最後は再度ベースを手に取り「You Have to Dance」。本当に終わって欲しくなかった。ずっとずっと続いて欲しい、そんな気持ちになる魔法のような時間でした。これ以上に魔法のような時間ってある?という私の気持ちに反するように繰り返される”You can never be too magical”というフレーズ。あなたは際限なく魔法のようになれるよ、と全てを肯定し、背中を押してくれるような力強い声と音楽。いやいやEsperanza、あなたはTOO MAGICALやわ。そう思いながらアンコールも終了。満点をはるかに超える最高のライブでした。

ライブ後のマジック

さあ帰るか、と席を立ち、そういえば物販見てなかったなと思い物販コーナーに立ち寄ると、何やらサイン会があると書いてある。マジか。

『12 Little Spells』のUSB Driveを買い、列に並ぶ。待っている間、自分でも少し震えていることがわかるぐらい緊張していました。しばらくしてEsperanzaが登場。思っていたより小柄。そしてサインブースに辿り着く前に友人たちを発見したようで、笑顔でハグを交わし合っていたんですが、その時の笑顔の可愛さと言ったら…! ステージやSNSで見せる完璧な姿とはひと味違う、人間らしいEsperanzaが垣間見え、そのギャップに完全にやられました。

そしてついに世界で一番美しいと思っている人とのご対面。待っている間にシミュレーションした通り、「あなたのこと、世界で一番美しい人だと思っています。ルックスだけではなく、その立ち振る舞い、声、音楽、オーラ、全てが本当に美しいと思っています」と言いました。否、言おうとしましたが緊張のあまり最後の方は上手く喋れませんでした。でも彼女は満面の笑みで少女のように喜んでくれて、またその笑顔にやられました。2016年に日本で観たライブの話をしたら、また日本にも行くと言っていました。日本の皆さん、ぜひ観てください。本当に凄いライブを観るチャンスですよ!

サインを書いてもらい、握手をしてその場を離れた後も、震えが止まらず。

心臓がバクバクと物凄い速度で拍動し、呼吸をするのもままならない始末。ここまで興奮したのは29年生きてきて初めてでした。車運転して帰らないといけないんだけど、ちゃんと運転できるかな? 途中で検閲とかあったらどうしよう、クスリでもやってると思われるんちゃうか?などと心配しながらもなんとか無事家まで辿り着けました。

ライブ終わりにはすでにTOO MAGICALだと思ったEsperanza。でもその後のサイン会であっという間にさらにMAGICALな姿を見せてくれたEsperanza。確かにMAGICALすぎるってことはないのかもしれない。まだ34歳。これからもっと魔法のような体験をさせてくれると信じてやみません。

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