“The Hate U Give”

今の自分の英語力を測るためにも、映画を観てきました。もちろん全編英語。

Netflixで何度か試みたことはありますが、映画館で全編英語の映画を観るのは初めて。Netflixでは英語字幕を付ければ大体理解できるものの、字幕なしではまだまだ理解できず途中で投げ出してばかりでした。

映画館なら逃げ出すこともできないし、お金も払ってるわけだから必死で意味を取ろうとするだろう、と自分を追い込んでみました。

そんな理由は実は2番目の理由で、1番の理由は単純に観たい映画がちょうど上映されたから。

”THE HATE U GIVE”

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2017年に発表された同名の小説(作者:Angie Thomas)を原作にGeorge Tillman Jr.がメガホンをとり、今月全米で公開されたばかりの映画です。

公式ページからあらすじを引用します。

Starr Carter is constantly switching between two worlds: the poor, mostly black, neighborhood where she lives and the rich, mostly white, prep school she attends. The uneasy balance between these worlds is shattered when Starr witnesses the fatal shooting of her childhood best friend Khalil at the hands of a police officer.  Now, facing pressures from all sides of the community, Starr must find her voice and stand up for what’s right.

Starr Carterは二つの世界を絶えず行き来する生活を送っていた。一つは彼女が住む、貧しく、ほとんどが黒人で占められた地域。もう一つは彼女が通う、裕福で、ほとんどが白人で占められた名門高校。この二つの世界の間の不安定なバランスは突然崩れ去ることとなる。ある日、Starrの目の前で幼馴染であるKhalilが警察官に射殺されたことによって。そして今、二つの世界両方からのプレッシャーに晒されながら、彼女は自分自身の声で、正しいことのために立ち上がらなければならなくなった。

日本語訳は拙訳なので参考程度に。


このあらすじからお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、2013年から始まったBlack Lives MatterBLM)と呼ばれる社会運動とリンクする内容となっています。念のために簡単にBLMについて説明すると、無実の黒人が白人警官によって射殺されたり、過剰に暴行を受けたりしたことに対して「黒人の命も大切だ」と声を上げた運動のことを言います。

この実際に起こった事件にインスパイアされたことは間違いありませんが、単純に「人種差別の問題」として片付けていなかったところがお見事でした。これは「黒人と白人」だけの問題ではないし、「人種」だけの問題でもないと思いました。今の日本にも十分響く内容だと思います。これを人ごととして観てしまうなら、それはその人が世の中とちゃんと向き合っていないからだと思います。

タイトルの”THE HATE U GIVE”、頭文字をとると’THUG’となります。オープニングタイトルでも先にこの4文字だけが出てきますし、ポスターでも縦読みすればすぐに’THUG’と読めるようになっています。この’THUG’という言葉はこの映画の重要なキーワードとなります。

’THUG’とは一般には「チンピラ」とか「悪党」とか「暴漢」とかそんな感じの意味を表します。ヒップホップ界隈で好んで使われるワードでもあり、特に2Pacという有名なラッパーが’THUG LIFE’というタトゥーを入れていることで有名です(ちなみにこの2Pacも凶弾に倒れて96年に25歳の若さで亡くなっています)。

この’THUG LIFE’について、日本語で検索するとなぜか「自分の生きる道を信じ、やりたいことを迷わず実行する真の男の生き方」みたいな解釈がいっぱい出てきますが、英語で検索すると全く違う解釈が出てきます。しかもこっちの解釈に関しては2Pac本人が語っている映像もあるのでこちらが本当の意味と思っていいでしょう。

では本人が語っていた’THUG LIFE’の意味とは。

’The Hate U Give Little Infants Fucks Everybody’

この頭文字を取ったものだと言います。Little Infantsとは「小さいまだ歩けない赤ん坊」ぐらいの意味です。

解釈としては「小さい子どもに与えた憎しみは、いずれみんなに返ってくるよ」と言ったところでしょうか。

憎悪の感情を見て育った子どもは、またその連鎖を繰り返す。

この映画はそんな憎悪の連鎖を止めようとする人たちの話です。

Carter一家は本当に素晴らしい家族だと思いました。父も母もそれぞれに違った強さを持っている。子どもたちを負の連鎖に巻き込まないよう、しっかりと教育を受ける機会を与え、自分たちの力を信じられるように愛を持って育てている。あんな父になりたいと強く思いました。

子どもたちはしっかりとその愛を受け、自分たちの力で憎悪の感情に打ち勝とうとする。あの親にしてこの子あり。みんな本当に強い。


”The Hate U Give”’U’はもちろん’YOU’を表していますが、この’YOU’の中には「社会」も含まれていると感じました。憎悪の感情が渦巻くような社会で育った子どもは、いずれ社会全体に牙をむく。その連鎖を止めないといけない。この映画はそれを強く訴えかけてきました。

もう平成も終わり。日本にも次世代に引き継がせたくない悪習が多々あると感じています。私たちの世代で、その悪習を少しでも多く葬りたいなと強く思いました。大それた話に聞こえるかもしれませんが、この映画を観ると自分の身近なところからでも少しずつ変えていけるんじゃないか、そんな希望も感じました。

まずは自分がStarrの父のように、強く愛のある父になりたいなと思います。まだ先の話ですが(笑)


これだけ書いておいて、今の自分の英語力でちゃんと聴き取れたのは34割ぐらいでした(笑) それでも筋はちゃんと分かったし、存分に楽しめました。自分の現在地が分かってとても良かったです。あと15ヶ月の滞在期間中に9割以上理解できるようになりたい。もっと頑張ろう。

この映画の内容ももっとちゃんと理解したいから、原作も読んでみようかと思っています。日本語訳も出ているみたいなので興味がある人は是非。私は頑張って原著で読みます。

日本公開は今のところ未定みたいですが、是非とも公開してほしいです。その時はみなさん是非劇場に観に行ってください。オススメします。

憎しみの連鎖をみんなで断ち切りましょう。私たちの世代で。本気ですよ。

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